エルヴィスがくれた出会い @


12年前に、ライヴを企画した。
当時、よく聴いていた「ジェームス・コットン」と「レイ・チャールズ」の
曲を演奏するためである。
このライヴのために買った「MUSIC MAN  Sting Ray Bass」
大げさなようだが、全く技術のない私にとって、この高価な買い物は
「清水の舞台から飛び降りる」ほどのもので、
ともすれば「宝の持ちぐされ」になることは十分わかっていた。
でも、「人前でBassを弾く機会は多分これが最後かもしれない・・・」
そう思うと、ずっと憧れだったこの楽器への想いはとめどもなく湧いてきて、
足繁く通った地元の楽器店に行き、意を決して買った。
このBassはbodyがズシリと重く、ネックも太くて長い。
私にとっては、弾きこなすことはおろか、抱えるだけでも一苦労である。
でも非常に重厚な音色が出て、音を出しているだけでうれしくなる。

無事ライヴを終えた後は、ケースにしまったBassを取り出して弾くことは
ほとんどなくなってしまった。
日々の生活にまぎれ、音楽をジックリ聴いたり、
Bassに触れて曲に合わせて弾くなどという心のゆとりと時間が持てなかったのである。
音楽は生活の一部になっていたはずなのに、
いつのまにかそれが私の生活から消えはじめていた。

ところが昨年の春、何かが心の中で動きだした。
何か大切なものを忘れている・・・
そう思ったとたん、
大好きだったエルヴィスの「アンソロジー」のビデオを久しぶりに観てみよう
という気持ちになったのである。

ぼんやりとした懐かしさの中で、映像を目で追う。
「カムバック・スペシャル」の映像が流れた時だった・・・
たった90秒のエルヴィスのパフォーマンスがあまりにもカッコよく、
爆弾を落とされたかのような衝撃を受ける。

そういえば、学生時代に何十回も観た「オン・ステージ」のビデオは
どこにいったのだろうか・・・
「明日に架ける橋」を歌うエルヴィスの姿が無性に観たくなって、家中探しまわる。
やっと見つけたそのビデオは、テープがボロボロになっていて、再生不可能。
諦めきれず、ビデオを入手するためにいろいろ調べたが、
すでに絶版になっている事がわかり、ため息をついた。

でも、
「また観たい!あの歌声を聴きたい!」
というエルヴィスへの想いはますます強くなり、
ファン・クラブに入れば入手できるかもしれないと思って入会を決めた。
何と、ファン・クラブに入ったことで、
思いもよらない様々な出会いが用意されていたのである!